『いま、なぜ地方分権なのか』という本を読んでいます。元東大教授で(財)東京市政調査会理事長の西尾勝氏と千葉大教授の新藤宗幸氏との対談本で、現在進行中の地方分権化の動きや課題が読みやすくまとめられています。
この本の第一章の中の「法令に縛られる地方の現実」はなかなか興味深い…というか日本の不合理な中央集権的行政にあきれてしまう内容です。大雑把に言うと、国は現場の実情を無視した全国一律の規定を杓子定規にあてはめ、大きな無駄を生み出しているということです。
具体例として、保育所の調理室の例が挙げられています。保育所施設をつくる時、調理師をおくこと、調理室をつくることが決められていましたが、その後調理師を置かなくていい、さらに外注してもいいように緩和されました。
しかし、調理室の必置規定はあいもかわらず残ったままです。厚労省は、業者に頼んでもいいが施設内の調理室を使わなければ認めないというのです。そして、この規定の適用を免除してほしいという要望が、構造改革特区として申請されているというのです。なんとも情けない話だと感じました。
他にも「『天井高3.0メートル』の基準に泣く」という話があります。学校の天井の高さは床から3メートルという大昔につくった基準がありました。埼玉県の草加市は財政難のため、天井高を2.7メートルに低くして1校あたりの改築費を2000〜3000万円安く抑えようとしました。
が、案の定というか、文科省は「全国的にわたって決めているナショナル・ミニマム(厳格に順守すべき最低の基準)」だからといって応じようとしません。草加市は、外国や塾、予備校のケースを調査し、生徒へのアンケートも行って再度申請しましたが、それでも文科省は許可しなかったということです。
多くの自治体が厳しい財政状況にあり、生き残りのためにできるだけ無駄を減らすことが求められています。また、ライフスタイルの変化に伴って、行政サービスの多様化・拡充も求められています。そのような難しい状況において、市民に一番身近である地方自治体がフレキシブルに対応するには、権限と財源の移譲を進めることで地域の実情にあった行政を進める必要があると思います。
なんでもかんでも地方に任せればいいとは思いません。先日、
神奈川のスーパーで、男児が首をエスカレーターと保護板の間に挟まれ重体になる事故がありました。保護板の設置と長さは建築基準法で定められていましたが、長さが不足しおり、そのことが死亡につながった可能性が指摘されています。保護板の規定は、99年にエスカレーターと壁に挟まれ重体、死亡する事故が相次いで発生したことを受けて設けられた経緯があります。生命身体の安全にかかわる規定は、国の法令により明確に規定する必要があるでしょう。
それにしても、実情を無視したくだらない法令は相変わらず自治体の柔軟性を束縛する一方、厳格に遵守すべき生命身体保護の法令は軽視され、痛ましい事故が起きてしまうというのは、なんとも悲しい皮肉です。
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